下肢静脈瘤について
ケガをすると血がでることがあると思いますが、その血が流れている管(血管)には2種類あるのをご存知ですか?
血管には動脈と静脈があり、それぞれの役割や構造は大きく異なります。
動脈は心臓から送り出された血液を体の隅々へと送り、一方、静脈は心臓へと血液を送り返す役割があります。動脈には心臓からの強い圧力がかかるため血管の壁が非常に厚くなっていますが、静脈はそのような圧力がかからないので血管の壁は薄く、重力に逆らって流れるため逆流しないように内側に弁と呼ばれる蓋のようなものがついています。
よく心筋梗塞を起こすなど怖い病気として知られている「動脈硬化」は動脈の病気です。
一方、静脈の弁が上手く機能しない状態を「弁不全」と呼び、特に脚の静脈の弁が壊れて心臓へ返るはずの血液が逆流し、脚の静脈に停滞してしまった状態――これが『下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)』です。
下肢静脈瘤は、成人の10人に1人が患っているとされている身近な病気です。遺伝性のある病気で、親族に下肢静脈瘤を患ったことのある方がいる場合は注意が必要です。親族にいない場合でも、立ち仕事の多い方や妊娠・出産経験のある方などは下肢静脈瘤ができやすいとされています。そのため、特に女性に多く見られる病気です。
血液が静脈内に停滞すると静脈が膨らんで太くなり、ボコボコとしたこぶ状になりますが、進行するほど大きく、見た目にもわかりやすくなります。これが『伏在型静脈瘤』です。その他にも網目状に血管が広がる『網目状静脈瘤』、クモの巣のように血管が広がる『クモの巣状静脈瘤』があります。
下肢静脈瘤は命の危険がある病気ではありませんが、老廃物の多く含まれた血液が停滞してしまうと脚のむくみやこむら返り、脚のだるさなどの症状を引き起こします。進行すると皮膚炎や色素沈着、潰瘍といった皮膚のトラブルを引き起こす場合があります。
下肢静脈瘤は自然治癒することがほとんどなく、治療方法は保存療法か手術となります。保存療法は進行を抑える、遅らせることしかできないため、症状がきつい方は手術をお勧めします。